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新しい方向性欠く、ソニーの新経営戦略――by 麻倉怜士【コラム1804PV突破!】 [SONY Group]

「期待外れである」――。今回の発表で一番の問題はソニーをどうしたいのかというビジョンが曖昧であることだ。「ソニーはエレクトロニクス、ゲーム、エンタテインメントの3つをコア事業と位置づけ、競争力向上と経営体質強化に向け」とは、これまでの路線を踏襲ということである。リストラの具体的内容は詳しいけれど、どういう会社になりたいのか、道筋や目標がはっきりとは見えない。

 個別の強化アイテムに関してはこの2―3年ずっといわれてきたことであり、今回は、それをどのように強化するかを語らなければならないタイミングなのに、それが少ない。

 「HDワールド」は、当然もうHDTVワールドになっているわけで、さらに具体的な言及が欲しかった。「インテリジェントにつながる製品群への集中」は、ソニーがコクーン(もうやめてしまったのだろうか)で手掛けたもので、当然、やるべきもの。「成長戦略を支える技術開発の強化」も当たり前である。唯一、「Cellデベロップメントセンターの新設」は、新しい半導体価値の展開ということで評価はできる。しかし、本当にデジタルAVでCellを真面目にやるのか。 「モバイルエンタテインメントの追求」については、そもそも「モバイルのソニー」だったはずであり、なぜアップルに負けたのか真摯な姿勢を持って立ち向かわないとならないのに、その展望が見えない。「有機ELを次世代ディスプレイの中心と位置づけ」たのは良いが、狼少年にならないように、願いたい。

 キュリオとクオリアは実質的に撤退ということだが、もともとビジネスサイズが小さく、出井路線の否定という単に象徴的な意味でしかない。

 むしろ金融事業を完全に手放し、ソニーが本格的にものづくり路線に戻るなどの決断が欲しかった。なぜ、ものづくりのソニーが金融をやらなければならないか。ものづくりに金融事業がどれほどプラスになるのか、具体的で明確な説明ができないのなら、それこそ撤退すべきだろう。その意味では、ソニーが否定したと聞いている9月16日付け日本経済新聞朝刊のスクープは、新しい方向を打ち出したと見るべきだ。そこまでやらないとソニーが本格的なメーカーとして新しい命を吹き込んだというインパクトは、ない。

キュリオに関してはロボットは今、エンターテインメントの流れから、より実用志向「人間と友達になる」段階にきているわけで、もっと実用性のある、より生活に密着した形でのロボットが必要になるのではないか。今回の実質的な撤退は「ブランドリストラ」ということを印象付けるために有名なものを狙い撃ちした印象がある。

 クオリアはとても数奇な運命をたどったブランドである。出井氏があまりに「IT」を言い過ぎたものだから、その逆張りで、感覚的、感性的ハイエンド商品をつくろうとしたのであった。根本問題は、出井氏のこの10年の経営が問題なわけで、それこそが否定されるべきではないか。

 ソニーは絶対にハイエンド商品を持たなくてはならない。なぜか。シャワー効果である。ユーザーにとってはブランドのシャワー効果、社内に対する技術のシャワー効果があるわけで、ソニーが凡庸なデジタル会社になってしまわないためにも(このままいくとその可能性が非常に高い)、それは絶対にいるのである。

 そもそもクオリアについていうと、クオリアという新ブランドではなく、通常のソニーブランドの中でハイエンドを構築すべきではなかったか。

 私は、ソニーには、ハイエンドをつくる力がまだあるという実例を知っている。AVアンプである。今度出るTA-DA9100ESという高級アンプは、技術者が自分の耳に絶対の信頼を置き、極限までこだわってつくったものだ。

 私は、五嶋みどりと今井信子が演奏するモーツアルトの協奏交響曲変ホ長調K297bの第2楽章の哀愁のメロディが、これほど哀切な感情を湛えて演奏された例を、このアンプ以外に知らない。この万感の音が実現できたことこそ、ソニーのコア・コンピタンスではないか。ものづくりの規範であり、全ソニー関係者がリファレンスにすべきだ。

 そんな真実のものづくりをプロモートすることこそ、ソニーの本当の復活につながるのである。

-筆者紹介-

麻倉 怜士(あさくら れいじ)

日本画質学会副会長
デジタル・メディア評論家

略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社を経て、プレジデント社入社。 雑誌『プレジデント』副編集長、雑誌『ノートブックパソコン研究』編集長を経て、1991年に、オーディオ・ビジュアル/デジタル・メディア評論家として独立。

 日本画質学会副会長。自宅に150インチのシアターを設置しハード、ソフトの研究を行っている。デジタルAV機器、ネットワークの動向に詳しい。

 著作は「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン)、「ソニーの野望」(同)、「DVD-RAM革命」(オーム社)、「DVD-RWのすべて」(同)、「DLPのすべて」(ニューメディア社)など多数。連載は日経01、PEN、日経WINPCなど。


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たくま

地方紙にこんな記事がのったそうです。
SONYは「持っているのが恥ずかしいブランド」になりかねない。
http://www.age1116.com/2005/12/post_862.html

今回の騒動を正確に記述した初めての新聞記事ですね。
by たくま (2005-12-07 23:24) 

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