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ソフトバンク、売れない社債が示す教訓 証券部 竹内弘文

2016/10/6 5:30日本経済新聞 電子版
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 ソフトバンクグループが新たな資金調達の手法で苦難に直面している。巨額買収後の資金手当てを見込んで9月に試みた新手法は債券市場の高い壁に阻まれ、当初想定したほどの資金を獲得できなかった。これまで携帯電話の割賦販売に伴う債権流動化や、個人向けの大型劣後債発行など様々な調達法に取り組み、成功させてきた。足元で買収により有利子負債が膨らむなか、財務戦略の重みはかつてなく増している。初めて「生みの苦しみ」を味わったソフトバンクは調達手段の練り直しを迫られる可能性がある。

英アームの買収について説明するソフトバンクグループの孫社長
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英アームの買収について説明するソフトバンクグループの孫社長
 ソフトバンクが9月に発行したのは「ハイブリッド債」と呼ばれる特殊な債券だ。25年債と27年債という超長期の2本立てで、返済順位が普通社債に比べて劣る。ソフトバンク側の判断で繰り上げ償還したり、利払いを繰り延べたりできる条項も付く。その代わり25年債の場合は当初5年間の利率が3%と高めだ。ハイブリッド債は資本と負債の中間的な位置づけで、格付け会社が一部を自己資本とみなすため、企業は財務の健全性を高められる。方々にとってメリットがあり、「いいとこ取り」の社債といわれるゆえんだ。

 今回、個人向けに発行したハイブリッド債は4000億円。当初5年間の利率が高めであることから、人気を集めて売れ行きは順調だった。だが、対照的に機関投資家向けは需要がさほど積み上がらず、発行額は710億円にとどまった。この結果にソフトバンクが受けた衝撃は大きい。当初、全体で6000億~7000億円程度の発行規模を見込んでいたからだ。もともとハイブリッド債の発行は、3兆3000億円を投じた英半導体設計大手アーム・ホールディングスの買収後の資金手当てが狙いだった。2017年3月期中に総額1兆円程度のハイブリッド債を発行する計画だったが、9月の第1弾が目標を大きく下回ったことで目算に狂いが生じている。

 なぜプロの機関投資家と個人とで明暗が分かれたのか。債券市場からは「数年単位で大きな買収を仕掛けるようなリスクの高い銘柄。3%程度の利回りでは投資できない」(運用機関)といった声が聞かれた。すでにソフトバンクの社債を多く持っている機関投資家は信用リスク管理の観点から手控える向きがあったほか、特殊な商品設計のため流動性が落ちる点も嫌気された。結果的に同社のリスクを個人により多く負わせた形だ。ハイブリッド債という“奇策”は果たして、大規模買収後の資金調達手法として最適だったのだろうか。

 ソフトバンクは低消費電力のチップを設計できるアームの買収で、あらゆるものがインターネットにつながる「IoT」時代到来に備えた種まきをしようとしている。アーム自体は極めて利益率が高い優良企業とはいえ、IoTはソフトバンクにとって未踏の分野だけに収益の将来像は見えにくい。言い換えれば事業リスクは高まる。本来、その増大するリスクの一端を引き受けるのはローリスク・ローリターンを求める債券市場の参加者ではなく、一定のリスクを甘受できる株式市場の参加者だ。ソフトバンク幹部は「買収資金の調達手法として、1株利益が希薄化する増資は全く検討しなかった」と話すが、アーム買収後の展望を明確に示せるなら株式投資家の方が理解を得られやすかったのではないか。

 実際、市場からはこんな声も聞こえてくる。「投資家からすればソフトバンクは3%程度のリターンを狙う銘柄じゃない。株式投資でリスクを取って10%以上のリターンを狙う銘柄だ」。ある国内大手金融機関の運用担当者はこう言い切る。市場でこうした見方が存在することを考えれば、新株発行という選択肢を完全に排除すべきではなかったように思える。希薄化リスクが現実化し、一時的に株価が弱含んだとしても、ソフトバンクの将来像にアームがどう貢献するのかを株式市場が評価すれば、中期的にはむしろ企業価値が増大する可能性は十分ある。

 孫正義社長はアーム買収について「囲碁でいえば50手先の一手。分かる人にしか分かりません」と話す。50手先の将来についてリスクをだれにどれだけ負ってもらうか。そのためにはどういう手段を取るべきなのか。今回のハイブリッド債発行から生かせる教訓は少なくないはずだ
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